読書レビュー:「82年生まれ、キム・ジヨン」なぜ性差別はなくならないのかを垣間見れた本

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ジェンダーやフェミニズムの研究を長年続けているかぜのたみです。

世界的にフェミニズム・ムーブメントが起こっているのに、日本では芸能や時事ニュースの影になりがちなのが不思議です。むしろ、余計に蓋をされそうでもある。

まさしく”なかったこと”にされるんですよね。

実の娘に対して犯罪行為を犯しても加害者側の父親は無罪になるんですよ(こちらのニュースですね)。暗澹たる気持ちしかないです…。

もしこのような事件で、被害者が息子、加害者が母親であればどうだったでしょうか。

私にはこの先を語る力がありません。

あえて救いようのない気持ちになる前置きでしたが、でもこれが今の日本の現状なんですよね。

今日の一冊はチョ・ナムジュ著『82年生まれ、キムジヨン』。印象的な表紙で、どの書店でも置かれているのは見かけて気になっていました。

今日はチョ・ナムジュ著『82年生まれ、キムジヨン』を読んだ感想を書いてみたいと思います。

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最近読んで考えた本:チョ・ナムジュ著「82年生まれ、キムジヨン」

2018年の暮れあたりから、書店で韓国のフェミニズム関連の書籍をよく見かけるようになって一連の大きな動きをふつふつと感じてはいました。

どうして韓国なのか、と一瞬思いました。

ですがWikipediaに記載された韓国の#MeToo運動を見ると、2ヶ月間という短期間の間で告発を受けた男性が多いことに驚きました。

そういう背景があるんですね。

韓国でも#MeToo運動の動きは存在し、政治家や俳優や文化人など多数の著名人が運動から2ヶ月ほどで告発を受けた。

引用 Wikipedia

どんな問題でもそうですが、ひずみが出る部分は必ず社会的に弱い立場である人間です。

性差別という問題は、韓国のみならず多くの国が抱えている問題ですが、告発が活発になる国とそうでない国があるのはどうしてなのだろうか…と考えました。

おそらくですが、きっと男性中心の権力構造によって生きずらい人が増えてきたり、社会的な問題が浮上してくると、こうした底辺からの見直しが起こるのではないかなと感じました。

その国で生きる人の根底にある不満や不安などのネガティブなエネルギーが、何が原因なのか直視できるようになるまでは、きっと今ほどの長い時間や大きな事件がないと起こり得なかったことなのだと思います。

「ここに書かれているのは私だ」と感じる女性はどのくらいいるでしょうか

この本は”82年生まれのキム・ジヨン”という一人の韓国人女性の生い立ちから出産までを描いた小説です。

告発のドキュメンタリーや女性学など社会問題として定義された本はこれまでもたくさんあったと思うのですが、一人の人間を追って”性差別”を描いた物は意外と見かけたことがなかった気がしました。

私は83年生まれなので、違う国の違う女性に起こった小説にも関わらず、まるで自分の半生を振り返っているような不思議な感覚になりました。

と同時に、この小説だけでなく現実の自分の身においても展開されてきた状況が

性差別であり、理不尽であったこと

に知らないふりをしてきた自分と、行き場のないやるせなさに覆い尽くされました。

自分に起こったことを直接誰かに語るのはとても辛いですが、一人の女性の出来事を通して語られると共感やこれまで蓋をしていた感情に動かされるんですよね。

キム・ジヨンは私だ

そう思う女性は一体読者の中にどれほど存在するでしょうか。大なり小なり、きっと同じ時代を生きる女性ならば体験したことだと私自身は自分のこれまでを振り返っても感じました。

代弁者としてのキム・ジヨン

きっとおそらく女性なら遭遇している、してきたであろう場面がたくさん出てきます。

  • 同じ職場でも女性の方が給料が低い
  • 痴漢被害に遭っても女性側に非があるとされる
  • 仕事も家事も全て女性がやって当然

でも渦中にいる時はきっと”それ”が何なのかわからないんですよね。それに真実を知ってしまうと深く傷ついたり、生きることに絶望してしまう自分もいます。

その絶望に「慣れっこ」になってしまいそうになる心と記憶を、キム・ジヨンの視点を通してもらえると自分としてもまだ受け止められるし、理解ができる、という風に私は感じました。

この小説はキム・ジヨンが一人称で綴っていくのではなく、別の人物がキム・ジヨンの話を聞いている、という設定で描かれているのも良かったと思いました。

一人称で語るには、あまりにも辛い。

話を進めるのはキム・ジヨンを診察している精神科医という設定なのですが、この医師の視点が個人ではなく「社会」や「男性」や「一般的とされる感覚」なので余計に問題が浮き彫りにされています。

医師の感想として、幾度も書かれているので気になった文章があります。

私がまるで考えも及ばなかった世界が存在するという意味である。私が普通の40代の男性だったら、このようなことはついに知らずに終わっただろう。

P162

普通に過ごしていたら気づかない世界があるのだ

ということを男性医師は気づくんですよね。

私たちには当然の世界なのに、存在しないこととされている

そしてこれが女性が不遇で理不尽なことに日常的に巻き込まれていて辛い、ということではなく

自分にはそんな性差別のような問題はない、と男性自身が考えている

このことこそが問題の根本だと私は感じました。

問題の表出の仕方が違うだけで、あちこちにトラブルが起こっている現実があります。

被害者としての女性という立場ではなく、性差別というもの全体を見る

被害者として声高に遭ったことを叫ぶだけは問題は解決できないと、この小説を読んで思いました。

なかったことにされてきたのは

一人の人間の中にある感情や考え、つまり人権

それは女性だけではなく、男性の立場でも考えられることです。

もし男性が自分が不当な扱いを受けていることを感じてもいなければ、女性へのネガティブな思いとして噴出するのも当然の心の動きです。

韓国のフェミニズムムーブメントはそのことを、ミラーリング(性別を逆転させて映し出す)という表現を通して相手へ伝えることに成功していると感じました。

実際に小説の巻末ではその種明かしがされています。

男性も、人ごとではないんですよ。今まさに自分自身がその渦中にいて、その価値観さえ疑うことができないくらい洗脳されているのかもしれない。

それが一番恐ろしいことだと思っています。

Twitterでこのようなツイートを拝見して、まさにその通りだと思いました。

この小説に出てくる医師もその片鱗が垣間見えるのですが、当事者として考えられるようになるまで一体どのくらいの時間と出来事が必要なのか、と視点を移して考えたくなりました。

強者側とされる男性こそジェンダーを見直すべし。

ということなのかもしれません。

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自分では知り得ない世界を体感できるのが小説の良いところ

女性が男性の日常生活を知りうることがないように、男性が女性の日常生活を知ることもないんですよね。

ただそれを「知らない世界」と「よそで起こっていること」とするだけでなく、自身の知見にまで落とし込んでくれるのがこうした小説の意義だと思います。

女性が共感や解毒剤として読むのも一つですが、私自身は男性にとっても重要な視点をもたらす一冊だと感じました。

きっとこの本を読む体験は、ただの情報としての読書から、己を省みる人格としての読書へ転換されることだと思います。

「読書する人だけがたどり着ける場所」というのはこういうことなのかもしれないですね。

 

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ジェンダーの”今”を感じられる本を紹介します

今、これまでにないムーブメントの渦中にあるフェミニズムですが、たくさんの関連書籍が出版されています。

エッジの効いた書店では提案という形で書棚コーナーが作られている気がしますが、ビジネス書が並ぶ書店こそ、こうした視点が必要なのですけどねきっと。

私が読んで面白かった「”今”のジェンダー観」を知る本をまとめてみます。

ここからよく今日までたどり着いたよね、の一冊

『ザ・フェミニズム』 上野千鶴子 小倉千加子

この本が刊行されたのは今から17年前の2002年。

この本に書かれているのは「寄生虫としての専業主婦」論争であったり、半ば強者男性に食ってかかる的な話がメインだったりして、あまりナチュラルでないなという感じです。

我々は17年もの歳月を経て、よくぞここまで

という感銘を受ける、逆におすすめしたい本です。

でも日本で「フェミニズム」というと、このイメージが強いので毛嫌いする人が多いのかもな…と上野千鶴子さんをイメージしてふと思いました。

というか、よくこの本の場所から今日に到るまでの世界のMeetooに追いつけたよねというのが実直な感想です。

何事にも段階というものがあるんですねと痛切に感じます。

中古でほぼ無料で手に入ります。

性差別に遭った時、相手への返し方を教えてくれる一冊

『私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない』 イ・ミンギョン

私自身もですが女性差別が当然すぎて、相手にどう伝えればと考えあぐねることが多いです。

そして男性自身もそれに気づいていないことがほとんどです。

でも自分の中にわだかまりとしてはしっかり残る、そういうことに対してどのように対処すればいいのかが書かれている本、つまり実用書としての本ですね。

相手への指摘方法や伝え方、伝えるべき場面を知らないと、自分のモヤモヤは解消できないなと思いました。

もし女性と男性の権力が逆転したら…深く考える一冊

『パワー』ナオミ・オルダーマン

女性がある”パワー”を身につけて、女性が権力をもち、支配の中心になったら世界はどう変化するのかを書いた小説。

決して男性VS女性ということではなく、”権力を持つ者”としての言動や思考があるのだということにこの本を読んで気づきました。

男性が読むと体が震え上がるような思わず目を覆いたくなる残忍でエグい描写が結構続きますが、でも実際にそれは世界で女性を取り巻く状況であるということ。

男性が性差別を”わたくしごと”として捉えるには、リアルな一冊だと思います。

女性としては、自分が男性を屈す「パワー」をもし自分が持ったら、と考えてみるのも大事な気がしました。

私たち女性がもし、相手を傷つける兵器を体の機能として持っていたら、どう振舞うのでしょうね。

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まとめ

ジェンダーやフェミニズムと聞くと、ひやりとするところもありますが、今回読書レビューした「82年生まれ、キム・ジヨン」は一人の女性が送るストーリーとして、等身大で読むことができるのがよかったと思います。

自分も経験した理不尽なモヤモヤに「言葉」をつけてもらえて、スッキリ心のモヤが晴れるシーンがいくつも出てきました。

どうしても論調がかってしまうジャンルだけに、こうした「語り」が重要だなと感じましたね。

ジェンダーの”今”を表現した金字塔となる一冊ですね間違いない!

そして私たち女性が辛い悲しいと事件として共感するのではなく、男性も取り巻く「性差別」という問題を、双方でもっとライトに話せる日が訪れるといいなと願ってやみません!

声を上げなければなかったことにされること。

声を上げにくいことこそ、相手にきちんと言葉で伝える必要があるのだと感じた本でした。

 

だってわかるでしょう?では伝わらない

私たちは住んでいる世界、見ている世界が違うのだから。

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